The AI Summit San Francisco 2018 レポート②

AIソリューションの選択枝は確実に増えている
髙木 亮 氏  Ryo Takagi 
Marunouchi AI Club Executive Secretary

サンフランシスコで行われたAI Summitですが、今年で3回目ということもあり、完成度が高く独自性の高いサービスが多数出展されていたと感じました。北米においては、恐らくマーケットは既にAIソリューションを受け入れる態勢に入っているのでしょう。各分野において、意外ということもなく、なるほど、とうなずく機能をもつサービスが多く見受けられました。

ORACLEは取って出しの機能として、新規事業における組織運営上の問題を解決するAIソリューション(Oracle Adaptive Intelligent Apps)を紹介していました。このサービス、既に検討されている方も多いのではないでしょうか。

元々、組織運営とAIは親和性が高いと言われています。CRMサービスや間接業務サービスを握っている各社は今後同様の戦略でAI機能を提供していくことは容易に想像がつきます。そういった流れの中で、ユーザーは自社のどの部分でAI機能を適用するかを見極める段階に入っていると感じました。

また、NASAにおける機械学習のソリューション化についての発表もありました。こちらはスクラッチから組織内で画像認識のソリューションを開発し、それを運用している例です。ビッグネームにおけるAIソリューション実装の成功例と言えるかもしれません。



もちろんですがベンチャー企業も多数出展しており、それぞれユニークなAIソリューションを紹介していました。

一例としてtastryは味覚情報を数値化したレコメンデーションシステムで、既にワインの小売り店での実績があるということでした。味覚情報を独自のflavor matrix として数値化し、それを元に各個人のし好に合わせたワインやおつまみを紹介するサービスで、個人的に大変興味深く感じました。

ユニークなAIサービスが多数供給され始めている背景として、この2-3年でMicrosoftやGoogleといったプラットフォームプロバイダーが提供するAI機能が拡充され、SDKとしてのAIプラットフォームが整ってきていることがあるかもしれません。開発の現場で、開発技法がある程度パターン化できるようになってくることはエンジニアにとっては心強い限りです。今回、Googleがエンジニアリングセッションを行っていましたが、小さな会場でのセッションであったにもかかわらず場外にまで幾層にも人が溢れる状態でした。参加者のほとんどはエンジニアだったと思いますので、それほどGoogleの動向に興味があり、次の手を知りたいと思っているエンジニアが多いのでしょう。

 

いくら手元で精度の高い機能を作っても、それを運用することにコストがかかるのであればサービスとして提供することは厳しいでしょう。しかし、その一連の手続きを安価に設計・運用できれば話は別です。クラウドサービスが充実し、バックエンドに負担がなくなりつつある現在、AIビジネスへの参入という意味においては、今はかなり良いタイミングではないかと想像できます。

最後になりますが、ここでAIとは何か、ということについて。

今回のAIサミットに参加した限りでは、結局のところAIとは機械学習あるいは深層学習と分析手法の組み合わせにより生まれるサービス、といったこと以上のものはありませんでしたし、来場者も出展者もそれを受け入れていると感じました。今後しばらくはAIという言葉はそのように使われるのではないかと思います。

バズワードとしてのAIはパワフルですが、ゴールがありませんから、言葉が独り歩きする傾向にあり、結果として中身がない印象をもたらします。それよりは、複雑で複合的なサービスを代弁する、大きなシンボルとしての”AI”であることが今後も望ましいと筆者は考えます。そして、実際にAIサービスが一堂に会するAI Summitに参加することで、北米におけるAIという言葉は既にそのように使われているということを実感しました。

実はアメリカでもAIという言葉はバズワードしていた時期があり、エンジニア・ユーザー・エグゼクティブの間でその意味に乖離があった時期がありました。今はそれを乗り越え、上述の、シンボルとしてのAIという言葉が使われつつあります。アメリカのマーケットではAI機能の選択と集中が行われた結果理解が深まり、ビジネス上でAIが有効なパターンが見え始めているのかもしれません。いずれにせよ良い傾向だと感じました。

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髙木 亮 -Ryo Takagi - 
2年ほどヒマラヤを転々とした後、千葉大学大学院自然科学研究科修了。後に日本マイクロソフト社に所属し、Visual Studioおよび開発者向けライブラリ等の開発者向け製品のサポートおよびコンサルティング業務を5年間担当。その後Microsoft Corporation HQ へエンジニアとして移籍し、12年間本社にてWindows OSの開発に従事。在籍中にUniversity of Washington Data Science Certificateを取得。現在は独立し、シアトルにてBIおよびAIのテクニカルコンサルタントとして活動中。自然と人とテクノロジーが好き。